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約7割が初公開!? 「工芸教育の精華 ― 納富介次郎とデザインの思想―」│石川県立歴史博物館 様

  • 2022年12月19日
  • 高精細印刷

工芸_のとのお仕事用

「いしかわ赤レンガミュージアム」として親しまれている「石川県立歴史博物館」。

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2022年夏、工芸とデザインを専門的に教育する日本で最初の学校として明治20年に開校した金沢工業学校(石川県立工業高等学校の前身)と、石川の工芸を支えた「教育」に焦点を当てる、令和4年度夏季特別展「工芸教育の精華 ―納富介次郎とデザインの思想―」が開かれました。

今回はその特別展に伴い、弊社でお手伝いさせていただいた工芸教育の奥深さを100年先に遺す「図録」についてご紹介いたします。

約7割が初公開作品。英文翻訳された論考も含め、
「遺産」として後世に遺る重要な「図録」を制作。

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特別展「工芸教育の精華 ― 納富介次郎とデザインの思想 ―」では、金沢工業学校の開校以降、工芸教育者たちによって制作された作品や図案、図書資料が展示されました。その「図録」には、工芸王国・石川が誇る先進的な工芸・デザイン教育の全容、各時代の教育者たちの教育理念、工芸文化への想いが余すところなく落とし込まれました。

今やインターネットが普及し、情報は当たり前に流れてくる便利な時代。ですが、こういった長い年月をかけて遺されてきた「美術」や「工芸」、「教育」を次の世代へと確実に伝えていくには、インターネットでは情報の流れが早く、形として残らないため、適しているとはいえません。

やはりいつの時代も「遺す」(伝えていく)ことに一番特化しているのは「図録」なのです! 

その図録のメリットを改めてまとめてみますと、

  • 形として残り、いつでも好きな時に図録を開いて作品と向き合える
  • Webのように複雑ではなく、ページをめくるだけで展覧会を順番に、簡単にめぐることができる
  • 工芸品という細部まで味があるものを、画面の解像度や大きさ、ディスプレイの違いでの相違なく誰が見ても綺麗な写真で残すことができる

となるでしょうか。

本展覧会で出展された作品は、約7割が初公開であり、中には民家の納屋の奥底に眠っていたものや、民家の壁に描かれた作品もあったとか。また、「石川の工芸教育」をテーマにした展覧会はこれまでになく、作品や資料とともに各時代の教育理念を「後世に遺していく」という目的でも今回の「図録」が制作されました。

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このたびの「図録」制作にあたっての大きな課題は下記の3点でした。

  1. 大きなものから小さなもの、平面作品や立体作品、保管状態が違うものなど様々な作品があるため、それをどうまとめていくか
  2. 初公開作品が多く、色のターゲットは撮影時に見ることができる実物のみとなる
  3. 美術・工芸について専門知識が求められる英文翻訳

誌面の台割・レイアウト作成にあたっては、弊社の出版のノウハウを活かしてひとつひとつヒアリングを行いながら制作を進め、作品の印象的な所を部分拡大する等、撮影時からページ構成を考えながら作業しました。

制作にあたり、画像処理・印刷・製本だけでなく、デザインはエディトリアルデザインに長けたデザイナーへ依頼弊社スタッフも写真撮影に立ち合うなど多方面からサポート

デザインについては、「石川県歴史博物館」様からの「現代的な雰囲気を出したい」といったご要望を受け、サイズ感を検討したり、表紙のデザインや書体選定に少し「今っぽさ」が出るように、デザイナーの方にこだわっていただきました。

図録の設計では、ページ数が多いことを考慮して判径をB5サイズとし、本文用紙は軽い仕上がりとなるよう「b7トラネクスト」という用紙を採用。

また、弊社の画像処理の強みも発揮。凹凸の激しい木彫りの作品や、金や銀など、質感・ツヤ感の出しにくい作品も多くありましたが、撮影のライティングで引き出した立体感や質感をさらにしっかり表現するため、影の部分を暗くするなど、細やかな調整を行いました。

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弊社の画像処理のスペシャリストによる作業風景

少し専門的な話になりますが、人間はグレーなどの無彩色の色に、青みや赤みがどれくらい混じっているかで写真の色味を判断する傾向があります。今回の図録の写真は、基本的に背景がグレーとなっているため、「グレーバランス」といった、赤や青が浮いたりしないように色味を調節してバランスを取ることが特に重要。

こうしたプロの視点も交えながら、一枚一枚の写真の色味に気を付けながら、画像処理を施しました。

今回の図録制作で最も難しかったのが、翻訳作業でした。数多くの図録・出版物で実績のある「ザ・ワード・ワークス」様が翻訳を担当されましたが、初めて訳されるワードも多く、日本語原稿に修正が入るたびに情報を共有し制作を進めました。

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3日間にわたって行われた写真撮影にも立ち会いました。

この図録は、当初の見込みより、売上冊数が大きく伸びたとのこと! いろいろな場所に眠っていた作品の魅力がたくさんの人に届く、石川の工芸教育を伝える展覧会を一冊に詰め込んだ図録となりました。

能登印刷は、これまでも多くの図録に携わり、図録制作、美術印刷、高品位印刷の実績を積み重ねてきました。また、印刷会社では稀な出版部門もあり、書籍の出版・編集のノウハウも磨いて参りました。

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能登印刷が手掛けた「図録」の一部

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弊社では、それらの経験を活かし、お客様のご要望を一つひとつ汲み取りながら、書籍や図録を制作させていただきます。図録を作ったことがないという方もぜひお任せください。貴重な作品・美術品・工芸を未来へ遺すサポートを全力でさせていただきます!

弊社・能登印刷の高品位印刷について詳しくはコチラ
「高品位印刷 │ 能登印刷」

営業:番匠 茂治(能登印刷 カスタマーサクセス北陸本部)
プリンティングディレクター:山崎 剛(能登印刷 制作部)
画像処理:高岡 講太(能登印刷 制作部)
クライアント:石川県立歴史博物館 様
※ 会社名・部署名などは取材および記事制作当時のものになります。

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