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美術展『天平礼賛』で展示された 「高遠なる理想の美」作品を掲載! | (株)朝日新聞社 大阪本社 様

  • 2022年12月15日
  • 高精細印刷

天平礼賛_のとのお仕事用

正倉院宝物や奈良の社の仏像など奈良時代の美術工芸品などが天平芸術と呼ばれています。この天平芸術は日本美術の古典とされており、その時代の後生の人々を魅了し今なお人々の心をとられています。

2020年10月27日(火)〜12月13日(日)まで 大阪市立美術館で開催された「天平礼賛」では、天平時代の名品とともにその影響を受けたとされる後生の作品を紹介しました。日本近代における美術指導者と知られる岡倉天心が「高遠なる理想の美」と呼んだ天平芸術を体感するにふさわしい美術展。

その美術展の図録(図や写真を掲載した記録資料のこと、美術館や博物館において開催される展覧会のパンフレットのこと)の画像処理・印刷製造を (株)朝日新聞社 大阪本社さまよりご依頼いただきました(ありがとうございました!)。

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目的

● 中国の唐の様式の影響を受けたとされており写実的な要素が現れる作品が多く、忠実な色味を図録という紙面で再現し、読み手にとどけること

課題

● 図録をつくるプロセスというとき、まだ大阪市立美術館に搬入されていない仏像があり、美術品の色味については、まずは担当学芸員の方の脳内イメージが頼り。
● 絵画・彫刻・工芸・書蹟といったように美術品の種類が多様であり、図録を通して展覧会『天平礼賛』が醸し出す「高遠なる理想の美」を紙面において忠実に再現することは、なかなか高いハードルでした。

アクション&ツール

● 弊社の制作部には、画像処理チームという専門のチームがあって、そこにプリンティングディレクター(略して、PDと呼ばれています)がいます。そのPDがもつ長年の経験と知識をもってクライアントから頂く様々なリクエストを反映していきます。
● 弊社が持つFMスクリーンの製版技術と印刷技術を使って実物に近い印刷を可能にします。
● 色味については、担当する学芸員の方から細やかな確認をいただき、画像などの色調補正をおこなって展示物そのものの魅力をひきだすことができました!

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図録など高精細の画質を必要とするプロジェクトに向け、弊社では機械「FMスクリーン」を導入しています。この機械では、色の純度と彩度を忠実に再現するだけでなく、通常の印刷機械では表現しにくいお「シャドウ(影)」も忠実に再現し、グラデーションの色調変化にも対応できます。

一般的に、「図録」という言葉は聞き慣れない言葉かと思います。ときに“展示会カタログ”と呼ばれることもあります。美術展や博覧会といった“その展覧会”に関する情報が体系的に掲載されています。(上映される映画のパンフレットのような存在といえばわかりやすいでしょうか)下記のような内容が掲載されています。

  • 展覧会の主催者のコメント、開催の意図
  • 展覧会に展示された作品に関する情報や写真
  • 監修した学芸員の方による解説  などなど

『天平礼賛』の図録は合計220ページ! 作品の写真はもちろん、大阪市立美術館の担当学芸員の方の解説も掲載。「天平改元、大仏建立のきっかけをつくったのは大阪であった」という思いのもと「奈良の天平」ではなく「大阪の天平」を感じることができます。

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図録の製作は、実物の作品の「色味」「雰囲気」にいかに忠実に再現するかが肝。プロデューサーや学芸員の方々と二人三脚でお仕事を進めます(写真はイメージです)

さて、図録ですが、図録の原稿(データ)を受けとり、本紙色校正の調整を重ねて、ターゲットとする作品の色味にたどり着くことができました。そこからようやく「下版 ⇒ 印刷 ⇒ 製本 ⇒ 納品」といったプロセスを経て無事に納品に・・・。

いやいや、まだまだっ!
ここから地味ながらも大事な作業があるんです!

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アートファンの手元に残るものだからこそ、シビアな扱いを極めます。 (写真はイメージです)

印刷する際には、版ズレをおこさないように見当を合わせるのは勿論のこと。色校正を確認しながら同じインキの濃度で印刷し、紙粉やキズが発生しないように細心の注意が必要です。

表紙に箔押しを使っていれば、箔のエッジが綺麗になるように注意。図録は「美術ファンの手元に残る資料」だからこそ、全ての工程に細心の注意を払います。(図録だけってことはないですよ、もちろん!)

この印刷が終われば。さて製本です。

この製本もまた、確固とした技術と細心の注意が必要になります。「折り機で擦れてキズが付かないようにする」は当たり前、「図録の背中」の糊に気泡が入らないように、小口折の高さが均等になるように注意しながら作業を進めます。ここまでしてようやく完成!!

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本の「背中」と呼ばれる部分。ここに気泡など入らぬよう入らぬように。。。うー 美しい〜

まさに、図録は印刷会社にとって
画像処理の力、最新の印刷機器、そして職人のノウハウなどの総合力が問われるお仕事。

アートや美術を愉しまれる方の手元に残る記念品や資料となる「図録」!
無事に完成し納品したときは喜びもひとしおです。印刷に携わる者にとってはとてもやり甲斐あるお仕事のひとつです。

多彩な展覧会図録を数多く手がけてきた能登印刷。高精細印刷を可能にするFMスクリーン印刷機はもちろんですが、弊社のプリンティングディレクターが持つ画像補正の力も強み。

「図録をつくる」といった機会がございましたら、
是非とも能登印刷までお声がけください。お待ちしています!

実施・納品時期: 2020年10月
※ 会社名・部署名などは取材および記事制作当時のものになります。

クライアント:(株)朝日新聞社 大阪本社
弊社 営業:中村 源信(能登印刷 大阪営業部)
プリンティングディレクター:山崎 剛(能登印刷 制作部)

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